「胃ろうって結局なに?」「経鼻(けいび)とどう違う?」「介護職が見るべきポイントは?」—現場では、利用者さんやご家族の不安が大きく、説明や観察の”質”がそのまま安心につながります。この記事では、胃ろう(PEG:経皮内視鏡的胃瘻造設術)の基本から、介護職としての観察・ケア、よくあるトラブルと対応の考え方までを、できるだけわかりやすくまとめます。
1.胃ろうは「食べる力を守るための選択肢」

胃ろうは、お腹の皮膚から胃にチューブ(カテーテル)を通して、栄養や水分、薬を入れる方法です。口から食べる力が低下しても、必要な栄養・水分を安定して確保し、体力や回復力を支える目的があります。
誤嚥性肺炎を繰り返す方、嚥下(えんげ)機能が大きく落ちた方、意識レベルの低下で経口摂取が難しい方などが対象になることがあります。
ただし「胃ろう=終末」でも「胃ろう=延命だけ」でもありません。大切なのは、その人の生活の目標(楽に過ごした、リハビリで回復を目指したい、口から少しでも楽しみたい)に合わせて、医師・看護師・リハ職・介護職・家族が同じ方向を見ることです。

2.経鼻栄養との違い(介護職が知っておくと説明が楽)
よく比較されるのが経鼻栄養(鼻から胃へチューブ)です。
・経鼻栄養:短期の栄養管理に向くことが多い一方、チューブの違和感、自己抜去、鼻やのどの負担が課題になりやすい。
・胃ろう:長期管理に向くことが多く、見た目や違和感が少ない反面、造設部(皮膚の穴)を清潔に保ち、皮膚トラブルを予防するケアが必要
利用者さんの状態・予後・生活環境で適した方法が変わります。「どちらが正解」ではなく「この人に今どちらが合うか」です。
3.胃ろうのメリット・デメリット
メリット
・栄養・水分を安定して入れやすく、脱水や低栄養のリスクを下げやすい
・鼻のチューブがない分、違和感や自己抜去が減りやすい
・薬の投与がしやすい(※形状や手順は看護師・薬剤師指示に従う)
デメリット
・造設部の皮膚トラブル(発赤・びらん・肉芽、感染)が起きることがある
・逆流、嘔吐、下痢、便秘など消化器症状が出ることがある
・チューブの詰まり、抜去、固定不良など”機械的トラブル”が起こることがある
介護職は医療行為は行いませんが、「異常に早く気付く目」はチームの要です


4.介護職が押さえる観察ポイント
胃ろう管理で重要なのは、”いつもと違う”の早期発見です。特に以下を意識すると事故が減ります。
①造設部(皮膚)の状態
・赤み、腫れ、熱感、痛みの訴え
・浸出液(ジュクジュク)、悪臭、膿っぽい汚れ
・肉芽が盛り上がって出血しやすい、衣類に擦れている
②全身状態
・発熱、倦怠感、顔色不良
・せき込み増加、痰増加(誤嚥や逆流のサインのことも)
・体重減少、むくみ、尿量の変化(脱水・低栄養のヒント)
③注入中・注入後の様子
・お腹の張り、苦しさ、吐き気
・注入後にゴロゴロ音が強い、下痢が続く
・逆流っぽい仕草、湿った咳、声の変化
”胃に入れているから誤嚥しない”と思われがちですが、逆流して誤嚥するケースはあります。だからこそ、姿勢や注入後の体位保持が大切です(具体は施設の手順・看護師指示に従います)。

5.よくあるトラブルと「介護職の動き方」
ここは現場で差が出るポイントです。焦らず、でも放置しない。
・皮膚が赤い/ただれている
→まず摩擦・湿り・汚れが増えていないか確認。記録して報告。清潔保持や保護材の見直しは看護師と相談。
・漏れが増えた(衣類が濡れる)
→固定のゆるみ、体位、腹圧、便秘などが関係することも。量・色・臭い、いつからかを整理して報告。
嘔吐・強い腹部膨満
→体調変化の可能性。安全確保と早めの報告。誤嚥リスクが上がるので観察強化。
・チューブが抜けた/抜けかけ
→これは緊急性が高いことがあります。施設ルールに従って直ちに看護師・っ管理者へ連絡し、指示を受けます(自己判断で戻さない)。
ポイントは「何が起きたか」を正確に伝える材料をそろえること。
例:いつ/どのタイミングで/どんな症状(赤身、出血、量、臭い、痛み)/バイタルや表情/注入の関連、など。

6.”口から食べる”との付き合い方
胃ろうがあっても、状態によっては「少量の経口摂取」を併用する方もいます。ここは医師・ST(言語聴覚士)・看護師の評価が大前提ですが、介護職は「食の楽しみを守る」関わりができます。
たとえば、食事場面の姿勢、声掛け、食形態の理解、疲労のサイン(集中力低下、咳増加、湿声)に気づくこと。胃ろうは”食べることを奪うもの”ではなく、安全を確保しながら楽しみを支える土台にもなり得ます。

まとめ:胃ろうケアは「観察」と「連携」で安心が決まる
胃ろうは、栄養や水分を安定して確保し、生活を支える大切な手段です。一方で、皮膚トラブルや逆流・感染などのリスクもあり、毎日の小さな変化を見逃さないことが安全につながります。
介護職ができる最大の役割は、医療行為ではなく、”いつもと違う”を言語化して報告できること。その積み重ねが、利用者さんの苦痛を減らし、ご家族の不安を軽くし、チームのケアの質を上げます。
あなたの現場では、胃ろう利用者さんのケアで「ここが難しい」「これが助かった」という経験はありますか?よければ、困った場面や工夫していることをコメントで教えてください。現場の知恵を一緒に共有出来たら嬉しいです。


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