
嚥下食(えんげしょく)とは、飲み込み(嚥下)の力が弱くなった人でも「安全に・できるだけおいしく」食べられるように、形・固さ・まとまり・水分量を調整した食事のことです。。高齢者や脳卒中後、パーキンソン病、認知症などでは、むせやすさ・食後の痰・微熱が続くなど”誤嚥(ごえん)”のサインが出ることがあります。誤嚥は肺炎につながるため、嚥下食は命を守る大切なケアのひとつです。
嚥下食で大切なのは「固さ」より「まとまり」
よく「柔らかくすれば安心」と思われ得がちですが、実は柔らかすぎてバラける食材は口の中で散り、喉へ流れ込みやすく危険なことがあります。嚥下食の基本は、①口のなかでバラけにくい、②適度にすべる、③喉を通るときにまとまる、の3点。パサつきやすい芋類・パン・ゆで卵の黄身、細かく砕ける海苔やふりかけ、繊維が残る葉物などは注意が必要です。
代表的な形態と選び方(目安)
嚥下食は施設や病院で基準が異なりますが、考え方は共通です。
・やわらか食:噛む力は弱いが、ある程度噛める人向け。食材は小さめ・やわらかめ。
・きざみ食:噛みにくい人向けに刻むが、刻みすぎると散るので”とろみ”や”あん”でまとめる工夫が必須。
・ミキサー食/ペースト食:舌でつぶせる、飲み込みやすい。水っぽいとむせるため、とろみや増粘剤で粘度調整。
・ゼリー食:形が保ててまもまりやすく、誤嚥リスクが高い人に使われることも。
「今の形態が合っているか」は、むせの有無だけでなく、食後の声(ガラガラ声)、痰、疲労感、食事にかかる時間(極端に長い)でも判断します。
とろみのコツ:濃すぎても薄すぎてもNG
水やお茶はサラサラしていて気管に入りやすい一方、とろみを付けると流れがゆっくりになり、タイミングを取りやすくなります。ただし濃すぎると口に残り、逆に誤嚥につながることがあります。基本は「本人が一番むせにくい粘度」を見つけ、同じ濃さを”毎回再現”すること。増粘剤は入れてすぐより、少し置いたほうが安定する商品もあるので、説明書どおりに作るのが安全です。
誤嚥を減らす”食べ方”のポイント
嚥下食だけ整えても、姿勢や介助方法が合わないとむせます。
1.姿勢:骨盤を立てやや前傾。顎を軽く引く(反り返りは危険)。
2.一口量:小さめから。急がせない。
3.ペース:飲み込んだのを確認して次へ。声掛けは短く、落ち着いたトーン。
4.左右差:片側に食べ物が残りやすい人は、食べやすい側へ誘導。
5.食後ケア:口腔内の残渣は誤嚥性肺炎のリスク。食後の口腔ケアと、可能ならば座位保持(しばらく起こしておく)が有効。
過程で作る時の工夫:おいしさは”あん”と”だし”
嚥下食は見た目が単調になりやすく、食欲低下につながります。おすすめは「だし・とろみ・あん」を味方にすること。例えば魚はほぐして出汁あんでまとめる、野菜は裏ごししてポタージュ風にする、肉は繊維を断つように調理してムースじょうにするなど、食感は安全に、味はしっかり。温度も大切で、冷めると固くなる料理は注意が必要です。
まとめ:嚥下食は”安全”と”その人らしさ”の両立
嚥下食は、誤嚥を防ぐための食事形態があると同時に、楽しみを守るケアでもあります。「むせないこと」だけに偏ると、食べる喜びが失われがちです。逆に「好物だから」と無理すると肺炎のリスクが上がります。本人の状態は日々変わるため、むせ・声・痰・疲労・食事量を観察し、必要に応じて形態を見直しましょう。迷ったときは、管理栄養士、言語聴覚士(ST)など専門職に相談することが安全への近道です。食べられる形を探し続けることが、生活の質を支える一番の嚥下ケアになります。

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