はじめに
「自分は絶対に人を傷つけない」と思っている人は多いでしょう。
しかし、心理学の歴史には、普通の人でも簡単に“加害者”になってしまうことを示す、衝撃的な実験があります。それがミルグラム実験です。
この記事では、この実験の概要と、そこから見えてくる人間の怖い心理について解説します。
ミルグラム実験とは
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1960年代初頭、アメリカ・イェール大学の心理学者スタンレー・ミルグラムは、第二次世界大戦で起きたホロコーストの背景にある「命令服従の心理」を調べるため、ある実験を行いました。
実験はこうです。
- 参加者は「先生役」として招かれる
- 別室には「生徒役」が座っており、先生役は問題を出す
- 生徒が間違えると、先生は電気ショックを与える
- 電圧は間違うたびに上昇し、最大で致死レベルにまで達する設定
- 生徒の悲鳴や「やめて!」という声が聞こえても、白衣を着た実験者が「続けてください」と命令する
なお、生徒役は実際には俳優で、電気ショックは偽物です。しかし、先生役はそれを知らず、本当に人を傷つけていると思いながらスイッチを押すのです。
驚くべき結果
多くの人は「そんなこと、すぐにやめるだろう」と予想しました。
しかし、実際には**65%**の参加者が、最大電圧までスイッチを押し続けたのです。
これは、「普通の人でも、権威の指示があれば他人を傷つけてしまう」という衝撃的な事実を示しました。
なぜ止められなかったのか
心理学的には、この行動は権威への服従によって説明されます。
- 権威者への信頼
白衣や大学の権威が「正しいことをしている」という錯覚を生む - 責任の転嫁
「自分がやったのではなく、命令に従っただけ」という心理 - 段階的なエスカレーション
少しずつ電圧を上げることで、危険な行為でも受け入れやすくなる
この3つが組み合わさることで、人は自分の倫理観を押し殺し、行動を続けてしまいます。
私たちの日常にも潜む危険
この心理は、歴史的事件だけでなく、日常生活にも潜んでいます。
- 職場での不正指示に従ってしまう
- 集団でのいじめに加担してしまう
- SNSでの誹謗中傷に乗ってしまう
つまり、私たちも状況次第で同じ行動をとる可能性があるのです。
防ぐためにできること
権威や集団の影響を完全に避けるのは難しいですが、意識することで防げる可能性は高まります。
- 命令の意味を疑う
「これは本当に正しいことなのか?」と立ち止まって考える - 責任は自分にあると自覚する
指示されたとしても、行動したのは自分 - 仲間を作る
意見を共有できる人がいれば、間違った行動を止めやすい
まとめ
ミルグラム実験は、「人間は環境次第で簡単に残酷になれる」という事実を突きつけます。
この結果を知ることは、自分自身を守るだけでなく、他人を守る行動にもつながります。
あなたなら、白衣の権威者に「続けてください」と言われても止められるでしょうか?
コメントであなたの考えを教えてください。
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